波力を活用した『コンテナ型発電装置GOMES』で再生可能エネルギーに挑む愛媛発の技術系企業
2026年03月11日
航海中のコンテナ船を活用した波力発電・充電モデルの構築
株式会社ウスイ電業は、波の揺れと海の浮力を利用して発電する装置『GOMES』の開発に30年以上取り組んできました。近年は実用化に向けて開発を加速し、2021年には国内特許を取得。さらに、船に乗せて発電するコンテナ型の波力発電装置を開発し、再生可能エネルギーの次世代モデルとして国内外で注目を集めています。
株式会社ウスイ電業 代表取締役社長 白石 康貴 氏
【事業内容】電気設備工事、公共工事、再生可能エネルギー装置の研究・開発
【本社所在地】〒792-0893 愛媛県新居浜市多喜浜五丁目2番10号
【TEL】0897-46-0623
【FAX】0897-46-0632
【企業HP】http://www.dokidoki.ne.jp/home2/usuielec/index.html
浮力への探求心から始まった挑戦
波力発電装置 『GOMES』の開発は、「なぜ何万トンもの船が海に浮かぶのか」という、私の浮力に対する興味と探求心から始まりました。 特に2011年の東日本大震災に伴う福島原発事故を機に、「有事の際に、人が制御しきれないエネルギー(原子力)ではなく、自然の力を活かした発電をするべき」との想いが強まり、本格的な波力発電装置開発の取組みを始めました。
当初は海に浮かべるタイプの波力発電装置として『GOMES』を開発していました。しかし、設置や維持にかかる高額なコストに加え、漁業権の調整、塩害、台風といった海上特有の課題に直面し、実用化への道のりは想像以上に険しいものでした。
その後、何度も試作と失敗を繰り返す中で、これまでの波力発電の常識を疑い、新しいアプローチを模索し始めました。従来のように海に固定するのではなく、コンテナボックスの中に波力発電装置『GOMES』とバッテリーを収め、船に積み込めるようにした『コンテナ型GOMES』という全く新しい形にたどり着き、今回「R6年度愛媛県ゼロカーボン・ビジネスモデル創出事業」の採択を受けて、実証事業やビジネスモデルの構築に取り組みました。
限られた空間に収める“ユニット化”で実用性と再現性を追求
初めに、従来の『GOMES』の設計を根本から見直し、装置全体を20フィートコンテナ内に収めるという課題に挑みました。パーツを細かく分割し、誰でも組み立て可能なプラモデル型構造を採用することで、製造工程の分散化や運送コストの削減、量産体制の構築を実現しています。
また、複数企業への分散発注により納期短縮を図るとともに、知的財産の漏洩リスクも軽減しました。現地では、ボルトとナットで組み立てるだけで完結するため、切断や溶接などの工程が不要となり、設置工期の大幅な短縮にもつながっています。
船舶上での使用シナリオと検証
2024年10月から、徳島〜和歌山間を航行するフェリー(内航船)にて、本装置の実証実験を行いました。
当初は装置内部の量体が独自の反動で動くことを想定していましたが、実際には船体の傾きと同調して動作することが確認され、船体の揺れが左右に1日約3万回発生する環境下であれば、20フィートコンテナ1基あたり(実際には最低2基の設置が必要)最大約50Whの発電が可能であるとの試算が得られました。
今回の実験では内航船を用いたため、波が穏やかで航行日数も短く、発電量は限定的でした。
しかし、外航船は波高が大きく、航行期間も長いため、より多くの揺れとエネルギーが得られる環境にあります。こうしたことから、本装置は外航船での運用において、より高い発電能力を発揮できる可能性があるという可能性が示されました。
現在は、外航船への搭載に向けて、積載スペースの確保、積載順序、税関検査の申請方法等、関連する法規制のクリアに取り組んでいます。
CO2削減に寄与する新しい電力輸送モデル
コンテナ船の余剰スペースに『コンテナ型GOMES』を搭載し、寄港ごとに充電済みのコンテナを降ろして電力を活用する新たな仕組みの実現を目指しています。
大海原を縦横無尽に航海しながら生成される波力発電の電力は、各港でEVの荷役機械や周辺施設の電力として利用できます。波力電力はコンテナ船が航海を続ける限り途切れることなく港へ供給できるため、再生可能エネルギーにおける課題の一つである電力の安定供給にも貢献する新しいビジネスモデルとして大きな期待を持っています。
ビジネス価値の向上と新規連携の広がり
『コンテナ型GOMES』の事業化に向けた取組みには、海運、造船、金融機関など複数の業界から高い関心が寄せられています。
航行中の波の力を活用して電力を発生・蓄電するという新しい発想に加え、コンテナ型とすることで既存の物流インフラをそのまま活用できる点が高く評価されており、早期の実用化への期待が一層高まっていると実感しています。特に、電力インフラが未整備な東南アジアでは、輸送と同時に電力を供給できる新たなエネルギーモデルとしての可能性が注目されています。
現在は国際特許の出願準備を進めており、海外展開を視野に入れた体制整備を進めているところです。
社員の自発的な参画とモチベーションの向上
『コンテナ型GOMES』の開発チームは、私を含めて社員5名で構成されています。営業日は、私が設計や準備を進め、社員には本業を優先的に進めてもらっていますが、夜間や週末には、自主的に集まって開発に取り組んできました。
このチームには、研究に自発的に関わりたいという強い意欲を持つ社員が集まっており、「社長、今週はどこまで進めましょうか」と声をかけてくれる場面も少なくありません。好きなことに真剣に向き合う姿勢が、チーム全体の原動力になっています。
社外からの高い評価とメディア露出
以前より愛媛県や新居浜市からの開発支援を受けていましたが、2023年3月に地方金融機関主催の「ビジネスプランコンテスト」で最優秀賞を受賞して以降、新聞・雑誌・ラジオなど多くのメディアから取材を受けるようになりました。広報活動を行わなくても『GOMES』という製品への関心が自然と高まり、地域発の再生可能エネルギー開発として着実に認知が広がってきています。
多様な環境での活用を目指す『GOMES』の応用力と今後の展望
今後、『コンテナ型GOMES』の技術を応用し、港湾内の大型トレーラーの荷重を活用した発電装置の開発を検討しています。
特に名古屋や横浜、東京といった大規模コンテナターミナルでは、1日あたり1万台以上のコンテナトレーラーが行き交うため、その通路に『荷重型GOMES』を設置すれば、船に乗せることなく、持続的かつ効率的なエネルギー創出が可能になると考えています。
また、養殖業が盛んな愛媛県においては、『コンテナ型GOMES』を和船型に改造し、養殖場の周囲に設置して波の揺れを利用する発電モデルの検討を進めています。このアイデアは、県外の事業者から寄せられたもので、養養殖環境に配慮した再生可能エネルギーとして期待が高まっています。
将来的には、過疎地域における新たな収益モデルとしての展開も視野に入れており、地元企業からの出資や共同開発、大学の水産研究機関、高等専門学校と連携しながら、実現に向けた準備を進めています。
今後、ビジネスモデル事業を考えている企業にメッセージ
情熱を持って取り組んでいれば、自然と応援してくれる人が現れるものだと思います。
私自身も、ここ数年で、銀行や出資者、大学の先生など、多くの方々から支援をいただけるようになりました。
正直なところ、最初の頃は、GOMESの話をしても独りよがりだと笑われたり、相手にされなかったりすることもありました。ですが、取組みに対する関心が集まり始めると、状況は一気に動き出します。是非、熱意を持って新しいことに挑戦してみてください。
企業概要
株式会社ウスイ電業は、愛媛県新居浜市に本社を置き、電気設備工事や公共インフラ整備を専門とする技術系企業です。長年にわたり培ってきた確かな技術力と実績を背景に、地域の社会基盤の安定に貢献する幅広い事業を展開しています。また主要事業と並行し、再生可能エネルギー装置の開発にも積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に向けた挑戦を続けています。