設備導入にとどまらず、意識改革でゼロカーボンを目指す

セルロースナノファイバー連続脱水シート化装置の画像

川之江造機株式会社は、太陽光発電設備の導入をきっかけに脱炭素に向けた取組みを推進するプロジェクトチームを社内に設置。節電の推進から新素材の開発に至るまで、同社が取り組んでいる脱炭素事業について、常務取締役 佐藤政利氏と、製造部 製造部製造課(余木)課長代理 池上 慶祐氏にお話を伺いました。

川之江造機株式会社

1944年(昭和19年)家庭紙抄紙機・紙加工機械等の製紙機械を製造する会社として創業。戦後、製紙業界を中心に事業を展開し、現在では不織布・機能紙製造設備の機械製造販売も手がる。日本で生産されるティッシュペーパーの実に約80%を川之江造機の抄紙機で製造されており、日本のみならず中国、台湾、ベトナムおよび東南アジア各国に進出し、幅広い海外展開を行っている。

【事業内容】製紙関連機械(家庭紙抄紙機・紙加工機械等)、不織布・機能紙製造設備の開発、設計、製造
【代表取締役社長】篠原 貴裕 氏
【本社住所】〒799-0195愛媛県四国中央市川之江町1514番地
【電話番号】0896-58-0111
【FAX番号】0896-58-2864
【企業HP】https://www.kawanoe.co.jp/

川之江造機株式会社の外観

脱炭素事業で高騰するエネルギーコストに解決策を

佐藤)弊社では、家庭紙用抄紙機及び紙加工機械の省エネルギー化と再生可能エネルギーの導入を進め、脱炭素事業に取り組んできました。 

弊社はもともとCO2排出量が多い会社ではありません。しかし、エネルギーコスト上昇は緊迫した課題であり、コスト削減の観点からも脱炭素への取組みは必要だと考えていました。

また、環境に対する社会的関心の高まりを受け、脱炭素事業への取組みを何らかの形で発信したいという目的もありました。 

※抄紙機(しょうしき)…パルプから紙を作るための機械のこと。パルプを水と混ぜて薄いシート状に広げ、乾燥させて紙に仕上げる一連のプロセスを自動化する装置。

佐藤政利さんの写真
常務取締役 佐藤政利さん

太陽光パネル設置で、自家消費から売電まで

工場建設のタイミングで具体的に体制見直し

佐藤)脱炭素事業を本格的に進めるきっかけは、新工場の建設時に、屋根へ太陽光パネルを設置することが決まったことでした。設置当初は「まず導入すること」がスタートで、省エネの延長線上にある取組みだったと感じています。

この取組みを機に、社内では脱炭素に向けたプロジェクトチームが発足し、体制の見直しを行いました。 

まずは自社の排出量を把握するため、排出量の調査を実施しました。灯油やガスといった直接排出分、電力使用など間接排出分はある程度把握していましたが、当時は事業者自らにより排出する温室効果ガス(GHG)の分類である『スコープ1・2』といった概念が社内でまだ浸透していませんでした。

太陽光発電や工場内のLED化を推進

佐藤)現在の太陽光発電設備は、2020年に立ち上げた三島工場が約500kW、埋立地を利用した東部臨海発電所が約1,990kWで、合計約2,490kWのメガソーラーとして運用しています。

また、工場のLED化を段階的に進め、現在はすべてLEDに切り替えることができました。さらに、工場の屋根には遮熱対策として宇宙産業の反射断熱材を応用した「リフレクティックス」や、工場や倉庫の金属製屋根を覆う「ルーフシェード」を採用しています。これにより、遮熱効果を高め、空調にかかる電力使用量の削減にも取り組んでいます。 LEDの切り替えとルーフシェードの設置については、『令和6年度愛媛県脱炭素型ビジネススタイル転換促進事業費補助金』を活用しました。

太陽光発電については、自家消費に加え、再生可能エネルギーで発電した電力を国が定めた価格で買い取る「FIT制度」を活用し、売電も行っています。

池上) FIT制度は2034年までとなるため、その後は蓄電池を導入し、自家消費を高めることも検討しています。
蓄電池は災害時の活用も期待できるため、地域貢献にもつながると考えています。一方で、初期費用やランニングコスト、投資回収面での課題もあるため、引き続き検討を進めていきたいです。

太陽光パネルの写真
東部臨海発電所
工場の屋根の写真
遮熱対策を行なった工場の屋根

脱炭素に向けた大きな挑戦、小さな改革

新素材セルロースナノファイバーの研究で、次なる一手を

佐藤)木材などの植物繊維をナノメートル(10億分の1メートル)サイズまで微細化した、環境負荷の少ない素材が『セルロースナノファイバー』です。
鉄の約5分の1の軽さで、5倍の強度を持つとされています。当社では2017年頃から、この素材の量産化に向けた加工装置の開発に取り組んできました。

セルロースナノファイバーの原料となるパルプは、製紙会社から大量に得ることができます。しかし、輸送効率の向上や製品への応用を考えると、シート化が必要でした。そこで当社は連続シート化装置の開発を担当し、愛媛大学や企業と連携した産学連携のもと、研究と試験を進めています。

2024年には愛媛大学と共同開発した『セルロースナノファイバー連続脱水シート化装置』が、第59回機械振興賞において機械振興協会会長賞を受賞しました。研究開発の成果が評価された結果だと考えています。 

現在は、シート化したセルロースナノファイバーの応用の可能性を研究している段階です。高い強度が求められる自動車部材や家電製品の筐体、吸収材などへの活用が期待されており、軽量化や高効率化を通じたエネルギー消費削減にもつながります。今後の地球温暖化対策への貢献が期待される素材です。

装置の画像
セルロースナノファイバー連続脱水シート化装置

小さな意識改革が、大きな成果に

池上)小さな取組みも、着実に成果を上げはじめています。普段からテレビ会議の活用により出張や工場間の移動を削減し、クールビズを採用しています。

また、昼の休憩時間に不要な照明を消灯することで、ピーク時と比べて電力量を3割削減できました。こうした活動を通じて、社内でも地球温暖化をはじめとした環境問題への意識が高まっていると感じています。 

症状の写真
セルロースナノファイバー連続脱水シート化装置で受賞した賞状と盾
盾の写真

「見える化」への課題

佐藤)脱炭素に取組み始めてから、採用面では学生からの関心が高まり、地域や異業種との新たなつながりも生まれました。さらに、同業他社や取引先からも、省エネ設備や再生可能エネルギー導入への評価をいただく機会が増えています。

製紙業界ではもともと省エネへの意識が高く、当社の設備にも高い省エネ性能が求められてきました。そうした流れの中で、自社としての取組みへの意識も、より一層高まったと感じています。

一方で、CO2削減は簡単なことではありませんでした。機械のエア漏れやコンプレッサーの稼働など、細かなエネルギーロスがまだ多く存在していることも分かってきました。また、社員一人ひとりへの意識浸透についても、課題が残っています。

現在は、張り紙やステッカーの掲示によって、こまめな消灯などの節電を呼びかけています。しかし、電力使用量やCO2削減量を数値として「見える化」できていない点が課題です。今後は電力使用量の見える化を進め、具体的な目標を設定したうえで、着実なCO2削減につなげていきたいと考えています。 

省エネに関する制度を利用し、目標を明確に

池上)社内体制としては、脱炭素担当者に加え、科学的根拠に基づく温室効果ガス(GHG)削減目標の設定を目指し、『SBT認証』獲得に向けた6名程度のチームを立ち上げました。

ただし、直接排出であるスコープ1、電力使用などの間接排出であるスコープ2に加え、サプライチェーン全体で発生するスコープ3の把握が難しく、中小企業向けSBTには該当しない状況でした。
そこでまずは、「2050年までの脱炭素化」を掲げるとともに、現状のCO2排出量を算定し、削減に向けた具体的な計画を定めました。その取組みを評価いただく形で、『えひめゼロカーボン・チャレンジ企業』に認定されています。

現在は、定期的に勉強会を開催し、省エネに関する事例の情報共有を行っています。あわせて、取組みの成果を確認しながら、設備保全や運転の最適化に関する社内会議も継続しています。

池上 慶祐さんの写真
製造部製造課(余木)課長代理 池上 慶祐さん

脱炭素に取り組みたい企業へのメッセージ

池上) 弊社の今後の課題は、老朽化した空調設備の更新、エネルギーロスの削減、EVの導入などが挙げられます。2035年までに、省エネ意識のさらなる向上と高効率設備への転換、再生可能エネルギーの活用を進め、事業所全体でCO2排出量50%削減を目指していきます。

これから脱炭素経営を考えている企業は、設備投資にしても、小さなことから継続していくことで、確実に脱炭素化につながっていくと思います。 ぜひ、小さなことからチャレンジしてください。

 

佐藤)脱炭素化を進めるうえで、まず自社の排出量を知ることが第一歩であり、明確な目的と目標を持って、小さなことから始めることが大切だと思います。
補助金の活用や、必要に応じて協力企業との連携、設備の最適化などもぜひ検討してみてください。
不明な点があれば、愛媛県の環境・ゼロカーボン推進課や、電気設備メーカーなどに相談するのも一つの方法です。何よりも、無理なく継続していくことが最も重要だと思います。 

集合写真