愛媛の未来に、安全・安心を。 地域に根ざす警備会社が『脱炭素』を経営の一端に据える
2026年04月30日
愛媛綜合警備保障株式会社は、24時間365日地域の安全・安心を支え続けてきました。同社では、脱炭素経営という新たな領域でチャレンジを進めています。警備という特殊な現場において、いかにして環境負荷の低減と高度なセキュリティを両立させているのか。総務本部総務部 次長の井関博文氏にお話をお伺いしました。
愛媛綜合警備保障株式会社
1969年(昭和44年)に愛媛県初の警備会社として創業。施設警備を中心に多角的な安全ソリューションを展開する。近年は脱炭素経営を加速させ、2025年には『えひめEVサーキュラーエコノミー推進協議会』(以下、推進協議会という)が進めるEVの「性能証明」・「残価保証」等を導入した中古EV「ReNEW EV」をいち早く導入。DXによる走行抑制やEV循環モデルの構築、社内組織「SG委員会」による持続的成長に資する施策推進など、地域の安全と環境保全を両立する次世代型の警備業を体現している。
※えひめEVサーキュラーエコノミー推進協議会...脱炭素社会の実現に向けたEVの普及と、EVバッテリーの再利用、リサイクルを通じた循環経済の推進による地域経済の活性化を測るため、愛媛県が主導し、産官学金の連携により設立した協議会(2025年10月設立)。
【事業内容】警備業及び付帯事業(消防点検・施設綜合管理・情報セキュリティ・ドローン空撮など)
【代表取締役社長】阿部克彦
【本社住所】〒790-0054 愛媛県松山市空港通2丁目6番27号
【電話番号】089-971-2010(代表)
【FAX番号】089-974-0551(代表)
【企業HP】https://www.alsok-ehime.co.jp/
安全を守るプロが「環境」を語る理由
弊社の存在意義には、「地域の安全・安心の創造に貢献する」という言葉があります。この役割を全うしようとすれば、環境問題は避けて通れない課題です。
近年の地球温暖化に伴う自然災害の脅威は増大しており、安全を守る立場として決して無視できません。2018年(平成30年)の西日本豪雨では愛媛県内でも甚大な被害が発生しました。災害の規模が拡大し、深刻さを増すことは、現場の危険を高めるだけでなく、地域の安全を支える仕組みそのものにも大きな影響を及ぼします。
こうした課題に向き合う決意の根底には、私たちが四半世紀近く続けてきた地域活動があります。世間で脱炭素やSDGsという言葉が一般的になる以前から、本社周辺の清掃や遍路道のゴミ拾いなど、地域に根ざした活動を20年以上継続してきました。
警備会社ならではの足元からの脱炭素
2021年(令和3年)4月にSDGs宣言を掲げた際も、これまでの活動の積み重ねが組織の共通認識となっていたからこそ、進むべき当然の方向として社内に受け入れられました。
この宣言を機に、照明のLED化やクールビズの推進、警備会社としての知見を活かしたリサイクル活動に着手しました。
特に、警備機器の消耗品管理では、使用済みバッテリーや電池の電極に発火事故防止の絶縁テープを貼付け、専用ボックスで厳格に分別・管理しています。バッテリーは電圧チェックを行った上でリユースを図り、引き渡し先には環境省認定のリサイクル業者を選定するなど、細部にまで徹底した足元の見直しが、私たちの脱炭素経営の第一歩となりました。
エネルギーの可視化で判明した車両対策という最重要課題
脱炭素経営を本格化させるに当たり、まず弊社が取り組んだのは、現状を正確に把握することでした。2022年(令和4年)にEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入し、全部門のエネルギー消費量を精査した結果、CO₂排出量の大部分が社有車による「車両走行」に起因していることが明らかになりました。この結果を受け、最初に着手したのが、走行距離の削減です。24時間稼働が必須で、山間部や島しょ部までを広くカバーする警備現場において、全車両をEV化することは現実的ではありません。
そこで、まずはデジタルを駆使して、移動そのものを減らす取組みを始めました。
その中心となったのが、ネットワークカメラを活用した「画像巡回」です。従来、警備員が車両で回っていた定期巡回業務を監視センターでの遠隔監視に切り替えることで、物理的な移動距離を大幅に削減しました。
さらに、AIによる映像での変化検知を導入し、異常があった場合のみ人が確認・対応する仕組みを構築しています。これにより、警備の質を維持しながら燃料消費の抑制を実現しました。加えて、侵入・火災などの緊急出動以外の誤報出動の抑制を推進しています。機械警備先における発報原因を分析し、警備機器誤操作・誤入館などが認められる場合には、メッセージセンサー(自動音声アナウンス)による誤入館防止対策のほか、お客様にご協力をいただき警備機器の仕様変更など誤報作動防止を図り、不要な出動を削減する仕組みを構築しました。
こうした施策の積み重ねにより、ガソリン・軽油の使用量は2023年度(令和5年度)に前年度比12.26%の削減を達成。続く2024年度(令和6年度)も、さらに前年度比4.46%の削減を実現しています。無駄な走行を減らすという実直な取組みが、確かな数字として表れています。
※エネルギーマネジメントシステム(EMS)...エネルギー使用状況を見える化し、最適に制御・管理するための仕組み。収集・分析したデータを元に無駄を特定することで、効率的な省エネ計画の策定に活用できる。
EV車両導入による省エネ実証と警備業界での課題
車両走行距離を減らす取組みと並行して、次に取り組んだのが、社用車のEV化です。
営業車の購入を検討していた幣社は、推進協議会が進める、EVの「性能証明」・「残価保証」等を導入した中古EV「ReNEW EV」をいち早く取り入れました。
導入した中古EVは、新車登録から3年が経過した車両ですが、バッテリー性能は新車時と比較しても90%以上を維持しており、1回の充電で約300キロの走行が可能です。現在は日中のみ稼働する営業車両として運用していますが、性能・コストの両面で十分な実用性を確認できました。
24時間警備ならではのEV導入の壁
一方で、24時間体制の警備車両へのEV導入には、実務上の課題も浮き彫りになりました。充電時間や充電場所の確保、緊急出動時のリスクなど、解決すべきハードルは依然として残っています。
そのため現時点では、全車両をEVに置き換えるのではなく、低燃費車とEVを併用しながら、段階的にEV導入を進める方針です。車両走行距離の削減施策と並行してこうした取組みを進めることで、脱炭素化を着実に推進していきます。
完全子会社化による脱炭素事業の拡大
2024年6月(令和6年)、当社はM&Aにより「エース電子サービス株式会社」を完全子会社化しました。これにより、EV充電設備の設置工事や省エネ商材の販売・施工体制を強化し、当社の脱炭素化モデルを地域に広げる取組みを加速させています。
子会社との連携によって得た販売・施工のノウハウを地域の企業や家庭へ還元することが可能となり、脱炭素の取組みは単なる社内施策にとどまらない、地域インフラとしての具体的な戦略へと発展しています。
また、子会社の技術者と当社の技術・営業部門が協働することで、省エネ施工や充電設備の設置効率が向上し、環境負荷低減に直結する体制が整っています。
バックオフィスの合理化とSG委員会による持続的成長の推進
弊社は、環境対策を一過性の活動で終わらせず、経営の仕組みとして定着させるため、2025年(令和7年)2月に社内組織として『サステイナブル・グロース(SG)委員会』を発足させました。この委員会は、業務の合理化・省力化によって得られた資源を、次世代への投資や人財確保へ再配置し、幣社の持続的成長を実現することを目的としています。
委員会主導のもと、バックオフィスで徹底したデジタル化を進めています。具体的には、給与明細や年末調整の電子化により、約750人分の用紙削減を実現したほか、約16,000件に及ぶ契約先への請求書についても、現在およそ60%が電子化されています。
さらに、社内稟議や申請書の電子化、AIによる議事録作成、鍵管理装置による鍵授受簿の省略などを進め、年間で約10万枚もの紙削減を達成しました。
こうした事務作業の効率化は、単なるコスト削減にとどまりません。紙の製造・配送・廃棄に伴うエネルギー消費を削減すると同時に、削減できた人件費や時間を、脱炭素設備の導入や新たなセキュリティサービスの開発といった成長分野へ回す原資を生み出しています。当社では、このPDCAサイクルを脱炭素に向けたビジネスモデルとして定義し、環境対策と経営効率の向上を両立させています。
脱炭素事業を考えている企業にメッセージ
脱炭素経営と聞くと、新たな設備の導入や多額の投資をイメージして身構えてしまう方も多いかもしれません。しかし、本質的な第一歩は、必ずしもそこにあるわけではないと私たちは考えます。まずは「今の自分たちの働き方に改善できる余地はないか」と、足元を見つめ直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
日々の業務を効率化し、そこで生まれた余裕を次のステップへと繋げていくこと。この無理のない循環こそが、組織を活性化させるとともに、脱炭素化への取組みを継続させる鍵になります。いきなり大掛かりな変革を目指すのではなく、身近な改善を一つ一つ積み重ねていく。その誠実な歩みの先にこそ、地域の安全と環境に優しい未来が両立する社会があると私たちは確信しています。