不織布製造の燃料転化でCO2削減を。現場の知恵を生かし脱炭素に挑む
2026年04月20日
愛媛県四国中央市にあるシンワ株式会社は、先発不織布メーカーとして業界を牽引しながら、脱炭素事業にも積極的に参画しています。製造過程で多くのエネルギーを使う事業において実施してきた設備の更新、機械の省エネやエコについての取組みを、生産部主任 大平達也氏と、管理部 人事・総務課 広報 井上夏樹氏にお話を伺いました。
シンワ株式会社
1947年創業。水引・金封製品などの紙加工業として創業、1966年に不織布の生産へと事業転換。以来、不織布の専門メーカーとして半世紀以上の歴史を重ね、2000年には植物由来の原料を使用したスパンボンド不織布生産を開始。BtoBのメーカーとして環境にも配慮した高品質な商品、技術開発に取り組んでいる。
【事業内容】不織布製品の開発・製造・販売
【代表取締役】井上和久
【本社住所】愛媛県四国中央市妻鳥町249-
【電話番号】0896-58-1100
【FAX番号】0896-58-1106
【企業HP】https://www.shinwacorp.jp/
命題としてエネルギー削減を掲げ続ける社内体制
大平)弊社が脱炭素の取組みを始めたのは「脱炭素」という言葉が一般的になる前のことでした。当社は「第一種エネルギー管理指定工場」に該当しており、10年以上前から年間1%のエネルギー単位削減が命題として課されていました。そのため、当社にとっての出発点はCO2削減というよりも、まずエネルギー削減そのものにありました。
太陽光発電を導入し、全量売電でコストも考慮
大平)太陽光発電にも早くから取り組んできました。固定価格買取制度の初年度に、約464kwの設備を導入し、全量売電を行っています。その後、2013年(平成25年)から2017年(平成29年)の間に合計1825kw増設しました。あと7年ほどで買取制度が終了になりますので、今後は蓄電池の導入などを検討し、自社工場のピークカットに活用できる体制を整えていく必要があると考えています。
企業活動においては、コストに直結するかどうかが大きな判断軸になります。モノづくりを行う以上、機械を動かし、多くのエネルギーを使うことは避けられません。だからこそ、企業として「今できることを一つずつ進める」という姿勢を大切にしてきました。
付帯設備の見直しで更なる効果を
大平)付帯設備の省電力化にも取り組んでいます。2台あるコンプレッサのうち、負荷の高い1台を熱回収式に更新しました。通常、コンプレッサは空気で冷却しますが、水冷式にすることでお湯を生成できます。そのお湯をボイラに供給することで、給湯温度が上がり、省エネにつながる仕組みです。この設備は12年ほど前に導入しましたが、当時としては珍しい取組みだったのではないかと思います。これらを初め、様々な省エネ活動の結果、ピーク時と比べ12.5%の省エネを達成しています。
導入を支えた補助金活用と、現場の知恵
大平)2022年頃からは、ボイラの都市ガス化とパイプラインの導入にも着手しました。ガス会社からの提案を受け、環境省の『グリーンリカバリーの実現に向けた中小企業等のCO2削減比例型設備導入支援事業』を活用してボイラを更新しました。ウクライナ情勢などの影響により、原料不足などの問題から導入には苦労しましたが、その結果、CO2排出量を約31%削減することができました。生産量あたりの原単位で見ても、実質的に約3割の削減を達成しています。
また2tボイラ6台を3tボイラ4台に集約し、エネルギーの約90%を都市ガスに切り替えたことで、総容量を維持したまま、効率を高めることに成功しています。
設備導入だけでなく、工場に適したレイアウトでも効果を追求
大平)令和6年度、愛媛県の『脱炭素型ビジネススタイル転換促進補助金』を活用し、残り10%だった重油使用の熱媒体ボイラを完全に都市ガス化し、燃料転換がすべて完了しました。本補助金は、CO2削減量の明確な数値目標が設定されている点が特徴です。提出書類も、日常業務で行っている省エネ計算や脱炭素計算の延長線上にあるため、実務に即した形で申請できました。企業としても、活用しやすい制度だと感じています。
ボイラについては、以前は3台がそれぞれ別の設備に接続されていましたが、現在は1台に集約し、3つの設備へ効率的に供給できるようにしています。これは生産部長から出た「運転時間を分散させれば、1台でも対応できるのではないか」という現場のアイデアがきっかけでした。
単に省エネ設備に置き換えるだけでなく、工場に適したレイアウトや運用と組み合わせることが、数値以上の成果につながると実感しています。また、いくらCO2削減につながっても、現場で使いにくい設備では意味がありません。やはり現場の声を最優先にすることが重要だと考えています。
LED化、省エネモデル導入で利便性も向上
大平)工場内のLED化にも、『省エネルギー対応設備更新等緊急支援補助金』を活用しました。工場ではもともと水銀灯を使用していましたが、不要な照明を排除するなどレイアウトの見直しを行い、11台の水銀灯を6台のLEDに切替えた結果、CO2を年間90%削減することができました。水銀灯は一度消灯すると再点灯までに約10分はかかるため、利便性の点から現場ではつけっぱなしになりがちでした。その点、LEDはすぐに点灯するため、こまめに消灯する習慣が自然と定着しました。エアコンも省エネモデルへ更新し、年間約19%の削減を実現しています。
このように「現場の使いやすさ」と「省エネ効果」が両立することが、取組みを継続させるうえで何より大切だと感じています。
身近なところから脱炭素へ、次の一歩を
井上)社用車として電気自動車を1台導入しました。以前から電気自動車への関心は高かったものの、性能や価格の面でなかなか導入には踏み切れずにいました。しかし、市場環境も整い、国内の電気自動車を選択できるようになったことで、今回の導入が実現しました。今後は、他の営業車についても電気自動車への切り替えを進めていきたいと考えています。
バイオマス・生分解性不織布でも脱炭素に貢献
大平)バイオマスとは、植物や動物、微生物など、再生可能な資源を活用した素材を指します。一方、生分解とは素材の種類ではなく、使用後に自然環境の中で分解され、土に還るもののことを意味します。当社の主力であるレーヨン繊維は、もともと植物由来のバイオマス素材ですが、それ以外の新規原料を用いた不織布開発にも注力しています。
また当社では、植物由来で土に還る「生分解性不織布」の製造にも取り組んでいます。廃棄して焼却してしまえばCO2として排出されてしまうため、できるだけ廃棄物を再利用し、商品化する取組みを進めています。
井上)当社の強みは、生分解性の不織布について6種類の製法を持っている点です。同じ素材でも、柔らかいものから硬いものまで、お客さまのニーズに応じた幅広いバリエーションを提供できます。超大型ラインを持つ大手メーカーとは異なり、新旧さまざまな設備と小回りの利く中小型ラインを併せ持っていることも特徴です。そのため、小ロットでの生産や特殊な要望、多様な仕様にも柔軟に対応できます。
これまでも、多くのお客さまのご要望に応え、バイオマス製品を開発してきました。化学繊維に比べると強度やコスト面で課題がある場面もありましたが、バイオマス素材でも強度を高める開発を重ねてきました。近年は、時代の流れとともに環境負荷の少ない製品を求める企業さまの声も増えてきています。その一例が、土にそのまま植えて還すことができる農業用育苗ポットです。さまざまな分野で製品が応用できる点も、弊社の強みだと思っています。
採用時にも、環境への取組みが「強み」に
井上)現在は、若い世代ほど環境問題への関心が高く、学生の皆さんに自信を持って弊社の取組みを伝えられることは、採用担当としても誇りです。魅力的な会社だと思ってもらえるよう、発信の重要性も強く感じています。
以前は、脱炭素の取組みを積極的に外部へ発信する意識があまりありませんでしたが、今ではSNSなども活用し、新しい取組みを進めるための情報発信を行っています。
また、近隣の学校の工場見学や職業体験なども積極的に受け入れています。そうした機会を通じて、弊社の思いや姿勢が伝わっていれば嬉しいです。
無理なく、無駄なく。環境に優しい循環を福利厚生でも
井上)業務以外の取組みとして、社内プロジェクト「Shinwa Books(シンワブックス)」と「Shinwa Farm(シンワファーム)」を始めました。
シンワブックスは、社内に図書室のようなスペースを設け、読まなくなった本などを共有する仕組みです。年間で300冊弱が利用されており、仕事関連の書籍だけでなく、小説や雑誌、料理本なども揃っています。特に高価な専門書は、新入社員など必要な人にはありがたい存在になっています。
シンワファームは、工場敷地内にある緑地を活用したシェア農園です。社員が年間1,000円で区画を借りることができ、各々が好きな作物を植え育てています。元社員の方が畑の管理を手伝ってくださり、収穫体験やお裾分によって社員の交流が生まれています。
買わなくていい、捨てなくていい。敷地内の緑地を活用し、作物が育ち、交流や体験が生まれる。業務以外でも、無理なく楽しく、持続可能な循環を実現しています。
脱炭素事業を考えている方へメッセージ
大平)設備が新しくなり、数値として改善が見えると素直に嬉しいですし、やりがいにもつながります。国や県が補助金制度を用意していますので、ぜひ積極的に活用してほしいです。
弊社も、脱炭素を考えることで、「電気をこまめに消す」「印刷を減らす」といった小さな行動が社内に根付いてきました。昨年と今年を比較し、情報共有をすることで、社内全体の意識も確実に高まっていると感じています。
井上)環境への取組みは、難しく考えすぎる必要はないと思います。まずは自社のメリットや業務効率の向上を意識するところから始めれば十分です。現場の声を大切にし、周囲を巻き込みながら仲間を増やしていくことが、持続可能な社会につながっていくはずです。
今後は、自社だけでなく、四国中央市の他の企業や行政とも連携し、地域全体で脱炭素の取組みを盛り上げていけたらと考えています。