四国唯一の「B5軽油」が変える。地域の未来、インフラを支える資源循環
2026年07月30日
株式会社ダイキアクシス・サステイナブル・パワー西日本事業所は、愛媛県を拠点に、廃食用油を回収してバイオディーゼル燃料に再生する『D・OiL』事業を展開しています。この取組を推進しているエネルギーソリューション事業本部 ES製造部 部長の伊藤正隆氏にお話をお伺いしました。
株式会社ダイキアクシス・サステイナブル・パワー
2011年(平成23年)設立。株式会社ダイキアクシスグループにおいて、太陽光・風力・バイオディーゼル燃料などの再生可能エネルギー事業を中心に、環境技術を活用した事業を展開する企業。四国で唯一のB5軽油製造事業者として、物流や空港のディーゼル車両に燃料を供給するだけでなく、地域イベントや小学校での出前事業、災害時の燃料支援などを通じて、地産地消の循環型社会づくりにも貢献している。
※B5軽油... 廃食用油から精製された100%バイオディーゼル燃料『D・OiL』を、通常の軽油に5%の割合で混合した燃料
【事業内容】小形風力発電機の研究開発・製造・販売・施工、太陽光および小形風力発電に係る売電事業、太陽光発電設備の設計・設置・管理、バイオディーゼル燃料の製造・販売及び『D・OiL』製造プラントの販売・維持管理、水熱処理装置の開発・設計・製造・販売・メンテナンス
【代表取締役】堀淵昭洋
【本社住所】〒103-0004 東京都中央区東日本橋2-15-4 PMO東日本橋9F
【電話/FAX番号】03-5825-4951 / 03-5825-4952
【西日本事業所住所】愛媛県松山市北吉田77-74
【電話/FAX番号】089-968-6000 / 089-968-8600
【企業HP】https://dasp.daiki-axis.com/
水処理事業から始まった、廃食用油リサイクルへの挑戦
弊社の廃食用油リサイクル事業の原点は、前身であるダイキ株式会社が行っていた水処理事業にあります。浄化槽や下水道に油が流れ込むと、水質へ深刻な影響を及ぼすため、油の適切な処理は長年にわたる重要な課題でした。
こうした現場課題に向き合う中で生まれたのが、「廃食用油を除去するだけでなく、有効に活用できないか」という発想です。この考えが、廃食用油の回収・燃料化に取り組むきっかけとなりました。
事業開始当時は、京都議定書の発効を背景に、環境配慮への社会的関心が高まっていました。こうした時代の追い風も、本事業の立ち上げを後押ししました。
回収から燃料化までを支える一貫体制
原料供給の安定化を目指した自社回収・自社供給体制への移行
弊社の最大の強みは、「回収」から「精製」、燃料としての「供給」までを一貫して担っている点にあります。しかし、現在の体制に至るまでには、運用面での試行錯誤がありました。
事業を開始した2002年(平成14年)当時、燃料の原料となる使用済みの天ぷら油は外部から仕入れる形をとっており、回収までは行なっていませんでした。しかし、資源循環の質を高め、供給の安定性を確実に担保するためには、自ら地域を回り、回収から供給までを一貫して担う体制が不可欠であると判断しました。
そこで、自社トラックによる回収体制へと転換しましたが、当初は回収拠点の新規確保が大きな課題となりました。実は、油の回収事業自体は江戸時代から続く歴史あるビジネスであり、現代においても多くの競合他社が存在します。後発である弊社が拠点を確保するためには、地域の飲食店や事業所を一軒ずつ訪問し、事業の意義や環境価値を丁寧に伝える地道な活動が欠かせませんでした。
また、回収現場では油の品質管理という実務的な課題にも直面しました。特に、植物性油に動物性油が混ざると、低温時に燃料が固まるリスクがあります。そのため、精製精度を維持するには、回収段階での適切な選別が極めて重要です。これに対し、適正な処理手順や保管方法の周知を徹底し、現場での細かな調整を重ねてきました。こうした取組により、原料の品質を入口から責任を持って管理できる体制が整い、現在の実効性の高い循環モデルへとつながっています。
地域とともに広げる脱炭素。約600拠点におよぶ回収網
現在、この回収の輪は愛媛県内全域へと広がり、西日本事業所における回収拠点は約600箇所を超えています。
この取組の起点となったのが、弊社が立ち上げた『油〜モアプロジェクト』です。
本プロジェクトは、家庭や事業所から回収した使用済み食用油をバイオディーゼル燃料(BDF)として再生し、地域のエネルギーとして循環させることを目的に始まりました。地域で出た油を、地域の移動や産業を支えるエネルギーへと生まれ変わらせる。この「見える循環」を実現する仕組みが、『油〜モアプロジェクト』の大きな特長です。
こうした取組が評価され、愛媛県と連携する形で2013年(平成25年)度にスタートしたのが、『エコえひめ・ストッピーポイント制度』です。本制度は、廃食用油の回収協力をはじめとするエコアクションに対してポイントを付与し、県民一人ひとりが地球温暖化対策に主体的に参加できる仕組みで、県内のホームセンターDCM店舗等、70箇所以上で実施しています。
家庭において、使用済み油を容器に入れて持ち運ぶ作業は、心理的にも物理的にも高いハードルがありました。しかし、ポイント制度によって自分たちの行動が環境貢献として可視化されたことで、県民の意識は「廃棄」から「再資源化」へと着実に変化していったのではないかと思います。現在、西日本事業所における廃食用油の回収量は、年間60万8,952リットル(※2024年12月期実績)に達しています。そこから製造されるバイオディーゼル燃料(BDF)は、年間54万8,057リットルです。回収量の90%以上を燃料として再生できるこの高い効率が、地域全体でリサイクルを支える「地産地消エネルギー」の強固な供給基盤となっています。
四国初のB5軽油が支える社会インフラ
厳格な品質基準を遵守し、磨き続ける独自技術
弊社は、四国で唯一B5軽油を製造する事業者です。かつて国内でバイオディーゼル燃料の利用が広がり始めた頃、不適切な品質管理や混合によるエンジントラブルが全国的に発生し、社会問題となりました。こうした状況を受け、2009年(平成21年)には「揮発油等の品質確保に関する法律」が改正され、既存の車両でも安全に使用できるよう、混合率を5%以下に制限する厳格な品質基準が法的に定められました。
弊社は同年、四国第一号となる「軽油特定加工業者」の登録を受けました。以降、原料となる『D・OiL』の精製精度向上に加え、温度管理や混合工程の最適化について、継続的な改善と検証を重ねてきました。その結果、安全性と安定供給の両立を実現し、2017年(平成29年)には、業界で初めてB5軽油およびB100燃料の両方でエコマーク認証を取得しました。これは、品質管理体制と環境性能の両面が高く評価された証です。
物流車両や空港での活用による資源循環
弊社が製造するB5軽油は、着実なCO2削減効果が期待できる燃料です。現在では、地域の社会インフラを支えるさまざまな現場で導入が進んでいます。2018年(平成30年)からは、セブン‐イレブン店舗向け配送車両への燃料供給を開始しました。店舗から回収した廃食用油を原料として『D・OiL』へと精製し、商品を届ける車両の燃料(B5軽油)として活用する、資源循環型の仕組みです。
さらに2024年(令和6年)からは、取組が空の玄関口にも広がっています。現在は四国内すべての空港において、JALの地上作業車両向けに、より高い環境性能を持つ『D・OiL N』(B100燃料)の供給も開始。高い信頼性が求められる現場においても、再生燃料の活用が進んでいます。
数値で見る環境貢献効果
地域で発生した廃食用油を再び地域で役立てる「地産地消型リサイクル」の実績は、着実に積み上がっています。
これまでの取組による累計のCO2削減量は612t‐CO2(2024年12月期)に達し、再生燃料による走行可能距離は約161万kmと試算されています。今後も、規格に準拠した安全かつ確実な燃料供給を通じて、地域の脱炭素化に貢献してまいります。
地域とともに広げる脱炭素化への動き
イベントでの再生燃料利用
弊社は、地域イベントへの参加を通じて、廃食用油の活用やCO2削減の大切さを伝えています。例えば、松山市の城山公園で開催されるイベントでは、屋台など会場で発生する廃食用油の回収や、発電機にB5軽油を活用することで、会場電力の一部を賄うなどの形で参加しています。また、愛媛マラソンにおいても再生燃料を供給し、影でイベント運営を支え、微力ですがCO2削減に貢献しています。
さらに2022年(令和4年)からは、東京都目黒区で開催される「目黒川みんなのイルミネーション」において、『D・OiL N』(B100燃料)を電力として提供し、美しい演出を下支えています。
イベントを通し、来場者にリサイクルやバイオ燃料の存在を身近に感じてもらう活動を大切にしています。
教育を通じた地域啓発と防災支援
小学校への出前授業も積極的に実施しており、廃食用油を使ったキャンドル作りなどの体験を通じて、子どもたちが環境貢献を学ぶ機会を提供しています。
また、弊社は松山市・西条市・東温市と、災害時の燃料供給に関する協定を締結しています。緊急時には、消防車やポンプ車などへの燃料供給を行い、地域の防災体制を支える役割を担っています。
太陽光から風力まで。持続可能な未来を創る多角的なアプローチ
弊社の挑戦は、廃食用油のリサイクルにとどまりません。再生可能エネルギーの普及を通じて持続可能な社会を実現するというミッションのもと、太陽光や風力など、地域の自然環境を活かした多角的な事業を展開しています。
太陽光発電事業では、設備の設計・施工からメンテナンス、売電までを一貫して手がけています。遊休地の活用や事業所の屋根を活用した自家消費型モデルなど、地域のニーズに合わせた最適な構成を追求してきました。
さらに、独自の小形風力発電機の研究開発や、廃棄物を資源化する水熱処理装置の開発にも注力しています。水処理からエネルギー創出まで、複数のソリューションを組み合わせることで、脱炭素社会への移行を多方面から支えています。
次のステージへ向けた展望
今後も『D・OiL』の混合率を高め、新たな用途への展開にも挑戦していきたいと思っています。現在はB5軽油が中心ですが、国の方針として検討されているB7への対応や、オフロード車両向けの混合割合を増加した燃料提供も視野に入れています。将来的には、船舶など新しい分野での活用も見据え、CO2削減という強みを軸に、地域と地球の未来に貢献していくことが目標です。
脱炭素に取り組む企業へメッセージ
脱炭素への取組は、決して簡単な道のりではありません。多くの課題に直面するからこそ、諦めずに一歩ずつ進むことが大切だと考えています。
すでにディーゼル車両をお使いの企業であれば、車両の改造を行うことなく、B5軽油を導入するだけで確実なCO2削減につながります。まずは検討してみたい、という段階でも構いません。ぜひお気軽にご相談ください。