自動車教習所運用を通じ、脱炭素化と外国人支援事業で持続可能な地域社会を目指す

教習車駐車場車庫に設置した太陽光パネル

愛媛県新居浜市にある新居浜自動車教習所は、脱炭素事業に精力的に取り組み、教習に通訳をつける外国人向けのプログラムを開始するなど、持続可能な社会の実現を目指しています。脱炭素化を進める取締役の上田大誠氏にお話を伺いました。

株式会社新居浜自動車教習所

1962年、愛媛県新居浜市で設立され、愛媛県公安委員会より指定自動車教習所として、毎年多くの自動車免許取得者を輩出。普通自動車や自動二輪車の教習のほか、70歳以上の高齢者講習も実施。さらに、外国人向けの運転免許取得プログラムも開始するなど、新たな取組みを進めている。

【事業内容】普通自動車、自動二輪車、準中型自動車、中型自動車等の自動車教習
【代表取締役社長】門田 智弘 氏
【本社住所】〒792-0050 愛媛県新居浜市萩生2750番地
【電話番号】0897-43-6021
【FAX番号】0897-43-6022
【企業HP】 https://www.niihama-ds.co.jp/

株式会社新居浜自動車教習所の外観

自然災害から芽生えた脱炭素意識

弊社で脱炭素事業を始めるにあたり、二つのポイントがありました。

一つ目は、日本で近年発生している大規模災害への備えです。特に「南海トラフ地震」の発生を危惧しています。弊社の基幹システムは電力がなければ機能せず、災害発生後も事業を継続するためには、自家発電の仕組みが不可欠だと考えました。
さらに、発電した電力を蓄電できる機能があれば、自動車教習所の広大な敷地を活かし、災害時の避難所としての活用も可能になります。

二つ目は、将来的なコスト負担の増加に備えるためです。今後、炭素税などさまざまな形で二酸化炭素の排出量に対するコスト増加が想定される中、長期的な事業運営を考えると、脱炭素化は避けられない課題です。

これらの理由から、弊社は脱炭素事業に取り組むことにしました。

取締役 上田大誠さんの写真
取締役 上田大誠さん

事業を通じた持続可能な社会を模索し実行

100%LED化と太陽光パネルの導入

脱炭素の施策を検討している際、弊社の経営会に参加する顧問税理士から、愛媛県の補助事業(脱炭素型ビジネススタイル転換促進事業)について紹介を受けました。さらに、その際に専門家を紹介してもらい、補助金を活用した脱炭素事業の推進を決定しました。

まず最初に取り組んだ施策として、2024年8月に251個のLED照明を導入し、館内照明を100%LED化しました。

さらに、同時期に教習車駐車場車庫に太陽光パネルを148枚、蓄電池を4機設置し、自家発電自家消費できる環境を整えました。電力利用の少ない定休日に蓄電し、営業日に館内で電力を消費するサイクルを行うことで、効率的なエネルギー利用を実現しています。また、発電量と消費量を可視化できるソフトを導入し、自家発電による消費率を継続的に確認しています。

教習車駐車場車庫に設置した太陽光パネル
教習車駐車場車庫に設置した太陽光パネル

脱炭素への取組みを続ける中で、弊社発電設備のパフォーマンスを検証したところ、いくつか課題が見えてきました。

夏の自家発電による発電量は、当初の予想では施設全体の消費電力の3~4割程度と見込んでいましたが、実際には2割程度にとどまりました。太陽光発電は自然を相手にしているため、発電量が天候に左右されることは承知していましたが、予想より発電量が少ない結果となりました。

しかし、導入からまだ1年未満のため、あまりマイナスには捉えていません。LED導入などで消費量自体は削減できているので、今後も継続的に観測し、状況に応じた対策を考えていきたいと思っています。
まだ年間での実績がないためあくまで予測ですが、春秋には施設全体の消費電力の6割程度を自家発電できると想定すると、年間では施設全体の消費電力の4~5割程度を自家発電で賄える見込みです。

画像:蓄電器が3台並ぶ
蓄電池で昼間の余剰電力を貯めておいて、夜間や災害時に活用するほか、電気の消費量も削減に努めている

外国人労働者と市民が共存できる環境を目指す

2024年7月から、教習所での外国人向けの教習・講習プログラムを本格的に開始しました。日本語の教習に同時通訳をつけ、日本語が流暢でない方でも教習を受けられる体制を整えました。
日本人の労働人口が減少していく中で、新居浜市のような工場が基幹産業である地域では、外国人労働者の力が重要になってくるでしょう。外国人に日本の交通ルールを学んでもらうことは、地域の交通安全にも繋がりますし、外国人労働者が地域に溶け込み、共存していくためにも必要な取組みだと考えています。

さらに、2025年春からは、外国人向けに日本語教室を開講する予定です。日常会話にとどまらず、文書を理解できるようになれば、資格取得やスキル向上にも役立ち、彼らの収入アップにも繋がると考えています。外国人が地域に溶け込むことで、新居浜市の活性化に繋がると期待しています。

インフラの一翼を担う者として、「持続可能な社会」の実現に向けて、引き続き使命感を持って取り組んでいきます。

外国人向けプログラムの看板
外国人向けプログラムの看板

脱炭素が市民の安心につながる

現時点での脱炭素事業のメリットは、年間の光熱費を約半分に削減できる見込みがあることです。

また、災害が発生した際に地域住民を受け入れる体制が整ったことも大きいと感じています。 前述の通り、弊社では外国人労働者向けのプログラムを実施しているため、マルチリンガルな避難所としても活用できます。
災害時に電気を供給し、寒暑から住民の皆さんを守る場所を提供できることで、人種を問わず地域の方々の安心要素になれば嬉しいです。

今後、市役所の防災マップや外国人向けの災害時マニュアルに掲載していただけるよう、積極的に活動していきたいと考えています。

時代に合わせた組織づくり

社会のニーズを捉えICT化などを導入

その他の取組みとして、新居浜自動車教習所内でICT化を進めました。
これまで社内文書管理が紙媒体であったり、社員間の情報伝達が口頭であったりしていたため、業務の効率化が進んでいませんでした。そこで、全社員にパソコンやタブレットを配布し、チャットツールで、情報伝達ができるように改善しました。

また、指導員と生徒の連絡手段が電話だけだったため、指導員が授業中だと連絡が取れないことが課題でした。これを解決するため、公式LINEを導入。これにより、生徒は授業の空き状況を確認でき、時間の有効活用が図れるようになりました。

脱炭素化を含め、変化する時代に対応して会社の体制を柔軟に変えていくことが、今後必要なことだと感じています。

取組みと認知の拡大を目指す

今後は、再生可能エネルギーの自家消費量をさらに増やすため、太陽光パネルの増設などを検討しています。また、教習用EV車両を導入し、自家発電した電気を使用して教習できる環境を整えたいと考えています。

今まで何度か弊社の取組みをマスコミでご紹介頂く機会がありましたが、今後も外国語教師の配置や脱炭素機器導入による避難所機能など、弊社の取組みをテレビや広告など様々な媒体を活用して、認知してもらう必要があると思っています。取組みを知っていただき、活動への理解が広がっていくことを願っています。

今後脱炭素事業を考えている方へメッセージ

弊社の場合、取組みの初期に補助金に関して詳しい方から情報を得ることができましたが、補助金情報の収集に苦労している企業も多いのではないでしょうか。そういった方々は、銀行の補助金情報サービスや、愛媛県などの自治体に相談することで取組みを進めていくことができると思います。

資金調達が障壁となり二の足を踏んでいる事業者も多いでしょうが、補助金などをうまく活用し、脱炭素に向けて取り組む企業が増えることを期待しています。

取締役 上田大誠さんの写真