地域に寄り添える循環型社会の実現に向けて、 大型の投資を伴う取組みから個人単位の取組みまで緻密に
2025年01月24日

2024年3月より、新体制となった株式会社フジは“新生フジ”として「企業活動の中で、省エネ・再エネへの取組みを通した脱炭素社会の実現と、資源の有効活用や廃棄物の削減を通した循環型社会の実現」に向け取り組んでいます。
社内でSDGsを担当しているサステナビリティ推進室の若松久威氏、建設部の國田勝裕氏、森川翔氏にお話を伺いました。
株式会社フジ
本店を愛媛県松山市に構えるイオングループのスーパーマーケット・ショッピングセンター。日常生活に必要不可欠な食料品を始めとした様々な商品やサービスの提供を行う。「豊かなくらしづくりを提案し、地域社会の発展に貢献し、人々を大切にする」という経営理念をもとに省エネ・再エネへの取組みを通した脱炭素社会の実現と、資源の有効活用や廃棄物の削減を通した循環型社会の実現に取り組んでいる。
【事業内容】食料品、衣料品、日用雑貨品等の小売販売
【代表取締役】山口 普 氏
【本社住所】広島県広島市南区段原南一丁目3番52号
【本店住所】愛媛県松山市宮西一丁目2番1号
【電話番号】082-535-8500(広島)
【FAX】082-261-0056(広島)
【企業HP】https://www.the-fuji.com/company/

頭打ちの施策から打開、円滑稼働のための組織改革まで
より良い未来への環境面の取組み
若松)企業活動の中で、省エネ・再エネの取組みを通した脱炭素社会の実現、資源の有効活用、安全・安心、環境負荷の少ない商品やサービスの提供を基本方針として掲げ、取り組んでいます。
2030年度までにCO2排出量2010年度(平成22年)比50%削減を目指して、使用電力の削減や環境に優しい設備の導入、環境負荷低減の取組みを進めています。
具体的には環境に配慮した冷凍冷蔵ケースの設置、照明設備を省エネに変更するなどの環境整備や、太陽光パネルの設置の拡大などに努めています。
また、資源回収のリサイクルや、ご家庭で余った食べ物などをお店に持参いただいたものを各自治体などに提供したり、無償で提供しているフードドライブとフードバンクなどの取組み、食品の廃棄物を肥料にして玉ねぎを作る食品のリサイクルなど、循環型社会の実現に向けた活動も行っています。

さらなる省エネに向けた次の一手を探していた
國田)2010年頃から、LED照明やBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を導入することにより、機器の消費電力の見える化や機器の効率的な稼働を行い、店舗で使用する電気使用量を削減してきたという経緯がありました。

さらなる施策をと考えたとき、機器を導入することによるコスト面的な課題もあり、次の一手となるものを探していました。
そこで、店舗面ではこまめな節電やチェックリストを運用してもらい、省エネというものが組織風土になるように取組みを推進。また、省エネ・再エネを推進してきたことが形となってきたこともあり、3~4年ほど前からソーラーパネルの設置も実施しています。

円滑な太陽光発電導入に貢献したPPAモデル
國田)課題は、高効率な機器を導入する際に多額の投資がかかる点です。例えば、店舗内に大型の空調機を導入する際には約一億円程度かかります。それを100店舗以上に導入する場合、大幅なコストがかかってしまいます。

ソーラーパネルも1店舗あたり、3,000~4,000万円のコスト。そこで現在は「PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)モデル」という第三者が店舗にソーラーパネルを設置し、発電された電力を弊社で買い取るという電力供給契約を結んでいます。
この方式により、ソーラーパネル設置費用が不要となり、購入する電力の単価も従来よりも抑えられ、環境面と利益面で貢献しています。現在60数店舗へ設置ができており、店舗総使用量の約10%程度を屋上の太陽光発電で賄うことができています。
円滑に脱炭素を実現するために組織を改革
若松)脱炭素を推進する担当が建設チームであったり、お客様サービス推進室であったりと一定していないことが課題でした。
経営課題として取り組めるように組織体制を見直し、サステナビリティ推進室が誕生しました。関連する法律への対応や遵守をしなければならない中で、まずはしっかりと法律を理解している社員が窓口に必要になりました。その都度勉強会に参加したり、法律の資料を入手したり、知識の蓄えなどを行ってきました。外部の勉強会やイオングループの勉強会などに参加しています。
現在は、他社の事例や自治体の情報を注視し、「フジとして現状はどうなのか?」という疑問を持ったうえで話し合い、提案・実施をしています。
より脱炭素化を推進するための効率的な機器更新
若松)自治体とも積極的に交流を行い、補助金も活用しながら環境に優しい機器導入を行い、脱炭素化を推進しています。
國田)具体的には、冷蔵ケースを更新する際に、一般社団法人日本冷媒・環境保全機構(JRECO)の補助金を活用しています。
また、大型空調機を更新する際にも環境省のSHIFT事業(工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業)内の補助金を活用。機器導入の際に、費用の一部に補助金を活用することで環境に優しい機器への更新を実現しています。
目標達成後のさらなる脱炭素アクション!
CO2総排出量30%以上を削減!
國田)最終的な目標は2040年カーボンニュートラルです。弊社は現在、大型空調機や冷凍冷蔵ショーケースの機器更新などを目的として、3ヶ年で60億円の投資を行っています。
ただ機器を変えるだけではカーボンニュートラルにはなりません。プラスアルファとして非化石証書(化石燃料を使わない発電による電力を証明するための証書)を購入できれば良いのですが、イオングループとして企業方針に合うかなど検討が必要です。
2010年度と比べて76.5%のCO2総排出量を目標としていましたが、現在は67%まで削減。2030年度までの50%目標に向かって道筋を立てています。多額の投資をして機器の更新や非化石証書を購入することにより、目標が達成できることは見えていますが、非化石証書は最終手段と考えています。今できることを考え、あらゆる視点から取り組んでいく必要があると考えています。


また、レジ袋については、当初は有料化と自治体の働きかけもあり、使用率を減らすことができていましたが、徐々に下げ止まりに。
レジ袋でゴミを出してもいいという自治体も多く、レジ袋自体もバイオマス対応や、環境にできるだけ優しいものに切り替えており、普通にゴミ袋を買うのとレジ袋を買うのとそんなに変わらないという理由からです。ゴミ袋と位置付けたレジ袋の中に食品などを入れて持って帰る、という点ではお客様の意識が分かれます。次の施策としてどうすればいいのか検討の最中です。
AIを活用した「見える化」と省エネ意識の向上
森川)エネルギーマネジメントの一環として、数年前より店舗内の消費電力が把握できる端末「エナッジ」を導入しています。その端末内に毎日AIが判断した気をつけるべき点を表示し、従業員の省エネ意識を高めるものとして取り組んでいます。
具体的には、出勤した際にAIが判断した項目を確認し、OKを押していくものです。また、今月の電力使用量と目標比を表示しています。この表示により消費電力量をより抑えていくものが「エナッジ」となります。

若松)機器は導入したら一定の成果を上げてくれますが、さらにそれを使う側の人間の行動によってより良い成果が生まれるので、その点でAIの力を活用しています。
省エネはこまめな部分から!日常生活にもつながる活動
國田)脱炭素化に向けて個人で活動できるコトを「ちょっといいコト、いっしょにいいコト」としてまとめたものを発信しています。
具体的には、「空調を適切な温度でコントロールしよう」「照明をこまめに消そう!」「運転の際には急発進を控えエコドライブを心がけよう!」などと個人で気軽に活動でき、普段の生活にもつながるものを発信するなど、行動変容を意識しています。
機器の更新だけでない!さらなる脱炭素化のための方法
若松)脱炭素社会実現のための環境負荷の少ない商品やサービス提供には、従業員の意識改革も含まれます。電気使用量を抑えるなど従業員一人ひとりの環境面での意識改革も行っています。
例えば、レジ袋の辞退率を店舗ごとに出すのですが、最高で97~98%ぐらいの辞退率がある店舗もあれば、70%~60%ぐらいの店舗もあるなど開きがあります。そこで、全店舗・全体の従業員に公表して意識向上を促したり、環境月間である6月や10月に脱炭素に関連する事項を啓蒙したり、社内での意識付けを行っています。
しかし、実務に伴うものでないと意識は上がりづらいですね。実際に関わっている建設の方やマネジメントを担当している方は環境に対する意識が高い状況ですが、今後は、他の従業員の方々にも環境に対する意識を高めてもらえるように、実務に伴った内容を発信できたらと考えています。
國田)店舗によって取組みにばらつきがありますが、私達が旗振り役として啓蒙を続けることで推進されていくと考えています。
太陽光パネルの設置方法や告知方法も手探りの連続
企業の環境への取組みは、一つの指標
國田)省エネを推進していくうえで、機器を更新したり非化石燃料で生産された電気を使用したりすることはコストがかかります。
しかし、近年では株主総会等で株主様から「環境に配慮した企業から仕入れを行うべきではないのか?」等の環境への取組みを支持する意見をいただくことがあります。企業の環境への取組みというものが、一つの指標になっていることを感じます。
若松)電気消費量の多い店舗が省エネを推進すると効果は大きく、それが数百店舗にのぼると効果はかなりのものになります。会社の責任としても社会的責任としても大きな意味があると考えています。


より多くのお客様に脱炭素を意識してもらえるように
國田)我々としても「環境に優しい取組みを推進している店舗」ということをお客様に発信していく必要があると考えています。実際に近年は「購入するなら環境に配慮した店を利用しよう」と選択されるお客様が増えていることが伺えます。
今後は、お客様に対して「この店舗では太陽光発電で全体の10%程度の電力を賄っている」と認識いただき、環境に配慮されていると感じてもらえるような店舗づくりを進めていきたいと考えています。
今後も脱炭素を進めていくために
國田)
現在、グループとして「2040年(令和22年)店舗でのCO2排出ゼロ」を掲げて活動しています。離れた場所でのソーラーパネル設置や、新技術にも目を向けて日頃から「どのようなことができるのか?」ということを検討していく必要があると思います。
今後の展望として、省エネと再エネの取組みを現状より進化させ効果を出したいと考えています。2030年(令和12年)までにCO2総排出量を50%まで削減するために、太陽光発電の設置を更に進めていく必要があります。目標として200店舗。
これによりCO2総排出量を大幅に削減でき、電気代というコスト削減による利益面での貢献もできます。設備面での導入をスムーズに計画的に推進できるように取り組んでいきたいと思います。
