『えひめSDGsアワード2023』優秀賞受賞! オープンファクトリーで脱炭素を地域に広げる

株式会社大石工作所の外観

主に化学プラントのメンテナンス業務を手掛ける株式会社大石工作所は、「CO2排出削減」をテーマに脱炭素に取り組み、グリーンファクトリー化を目指しています。市民や地元学生に向けたSDGsについての講義やイベント参加の実績も多数。
社内でSDGsを担当している総務部の安宅悠基氏と嶋田聡氏にお話を伺いました。

株式会社大石工作所

愛媛県新居浜市に位置し、石油や非鉄金属など、暮らしに欠かすことのできないさまざまなエネルギーや工業製品を生産するプラントの性能を維持する「プラントメンテナンス」、工場を建設する「プラントコンストラクション」を行う。2013年(平成25年)にプラントメンテナンス技術が愛媛ものづくり企業『スゴ技企業』に認定。SDGsにいち早く取り組みオープンファクトリーや地元産業振興等、地域活性化に向けて精力的に活動していることが評価され、「えひめSDGsアワード2023」で優秀賞を受賞。

【事業内容】プラントコンストラクション・プラントメンテナンス
【代表取締役】大石 憲一 氏
【本社住所】〒792-0893 愛媛県新居浜市多喜浜6丁目2番45号
【電話番号】0897-46-1160
【FAX】0897-46-1159
【企業HP】http://ois.gr.jp/

弱点から始まったグリーンファクトリー化プロジェクト

安宅)弊社は、2020年(令和2年)にSDGs宣言を行いました。その活動の中で、日常的に使用割合の高いエネルギーに関する取り組みが弱点ということが課題として上がってきました。その後省エネ診断を受け、レーザー加工機の待機電力の負荷が高いということが判明。2020年(令和2年)に電力の使用状況を確認できる機器『watt now(ワットナウ)』を導入して電力の見える化を行ったことが脱炭素事業を始めるきっかけになりました。
現在も本社工場において、省エネをはじめとした脱炭素への取り組みとして「グリーンファクトリー化プロジェクト」を目指し、私たち総務部と本社の製造部がチームとなり取り組みを継続しています。

総務部 安宅悠基さんの写真
総務部 安宅悠基さん

太陽光パネルで電気料金6割減に成功!脱炭素に向けた設備の導入

安宅)脱炭素事業を始めるにあたり、まずは老朽化したコンプレッサーを新しく入れ替えたり、照明を最新のLEDに変更したり、省エネ診断を受けて提案していただいた中で、補助金を利用しながらできることから取り組んできました。
生産設備の見直しにあたり、空気を噴射するためのエアーノズルのサイズを15mmから2mmに縮小し、エアーの無駄を排除。エアーの量を低減できたことで、エアーを供給するためのコンプレッサーの稼働時間が短縮され、省エネに繋がりました。
大きな取り組みは、2022年(令和4年)1月に、環境負荷を低減した工場を示す『グリーンファクトリー化』を目指すにあたり、本社工場に太陽光パネル1090枚を設置したことです。この取り組みにより電気料金は前年比6割減を達成しました。現在は、新しい垣生工場にも約1.5倍の数の太陽光パネルを設置しています。

本社屋根に設置した太陽光パネル
本社屋根に設置した太陽光パネル

また、同じ年の6月には社用車として電気自動車を導入しました。太陽光パネルで蓄えたクリーンエネルギーを活用した環境に優しい車を、社員も日常業務で積極的に使用しています。

導入した電気自動車
導入した電気自動車

組織で取り組み継続する難しさに向き合う

安宅)プラント業界は協力会社が一緒に仕事をしていますし、協力会社の社員も弊社の設備を利用しています。そのため、現場で作業する社員も含めて社内で取り決めた省エネ対策を、弊社だけでなく協力会社にも取り組んでいただくことが大切だと感じています。いかに現場の社員や協力会社を巻き込んで取り組めるかが課題です。
また、業務との両立も苦労しました。日常業務を行いながら、脱炭素の取り組みについてどこまで進めて何を目指すのかという壁にぶつかることがあります。継続することが大切だと思うので、やりすぎず持続可能な範囲を見極められるよう模索しています。

脱炭素事業をきっかけに広がる輪

安宅)弊社はオープンファクトリーや工場見学、地域貢献活動を積極的に行っています。その度に、会社として実施している脱炭素やSDGsの活動周知を通じて、学生や市民の方に環境活動を身近に感じていただける機会が作れているのではと感じています。
また、SDGsの活動をしている会社と認知していただけるようになったことで、学校や会社から企画イベントの誘いを受けることも増えました。近年では、市内の学生と一緒にESD(持続可能な開発のための教育)に特化した、学生がガイドをするツアーイベントに協力したり、自動車販売店との取り組みで電気自動車の活用方法を学ぶ防災カフェを開催したりと、学生や市内の一般の親子などを巻き込んで環境について学ぶ場所を提供してきました。

また弊社には、プラントで実際に稼働していた機器を再利用して作った小さな公園『Oishi Park』があります。イベントの際には、オープンスペースとして活用し、プラントの構造や限られた資源を再利用する一例として紹介しています。
これらのことがきっかけとなり、脱炭素やSDGsの取り組みが広がっていくと嬉しいですし、取り組みによって弊社を広く知っていただきたいと思っています。

イベントなどで利用する「Oishi Park」
イベントなどで利用する「Oishi Park」

嶋田)私は今年の7月に入社したのですが、会社が脱炭素やSDGsに精力的に取り組んでいることで会社への信頼や安心感というものを感じることができました。
前職でSDGs関連の表彰などに携わることがあり、「大石工作所」という社名はよく耳にしましたし、こういった取り組みに関しては他社に比べて頭ひとつ抜けている感覚がありました。そういった部分では、会社の認知度や価値向上にも繋がっていると思います。

今後も脱炭素を進めていくために

安宅)現状、稼働状況に対しての削減数値などを細かく算出できていませんので、今後は各機械にCO2排出量の見える化ツールを導入することを検討していきたいです。
また、現在本社と垣生工場で取り組めている部分を、今後営業所や工場が増えた場合に同じように展開していけるかが課題であり、より対外的に広く知っていただく上で大事な部分だと思っています。

嶋田)私は現在補助金関連を担当していますので、老朽化したエアコンを新しいものに入れ替えて省エネに繋げる準備をしています。私にとって入社後最初の取り組みとなるので、ここからより精力的に脱炭素に関わっていきたいです。

総務部 嶋田聡さんの写真
総務部 嶋田聡さん

「住み続けられる街づくり」を目指し、ボランティアで地域貢献を

安宅)私自身、学生時代からボランティア活動を続けています。社会人になってからは、個人的に農業ボランティアなどに継続して参加しています。人材不足の問題などを抱える過疎地域を、ボランティアで手伝うことで盛り上げ、SDGs目標にもある「住み続けられる街づくりを」に貢献したいという思いで取り組んでいます。
こういった取り組みに対して、会社がバックアップしてくれるので、社員がボランティアに参加しやすい環境が作られていると感じています。

嶋田)私は、前職でSDGs活動の推進に取り組む中で、「クリーンビーチ」という清掃活動のボランティアに複数回参加してきました。転職という形で少し距離はできましたが、参加は自由なので、今後も積極的に参加していきたいと思います。
 

今後脱炭素事業を考えている方へメッセージ

安宅)事業実態に伴う活動をすることが大切だと思います。SDGsウォッシュという言葉もあるように、見せかけの活動にならないよう行政や専門家に相談し、支援を受けることがおすすめです。会社に合った取り組みの方が成果も見えやすいですし、自分たちが取り組んでいる実感も沸くと思います。なにより、持続可能な活動の心がけが大切と思っています。

嶋田)これから取り組みを始めようという企業にとっては、何から始めていいか分からないこともあると思います。先ほど安宅が言ったように専門家を頼るのもいいと思いますし、セミナーなどに参加するのもおすすめです。まずはきっかけを掴んでいただくと、一つ二つ社内での案も出てくると思います。そこから少しずつステージアップしていくことで持続可能な取り組みができてくると思います。

安宅さんと嶋田さんの写真