『最大限の安全と最小限の環境負荷』をコンセプトに、 多くの人々に愛されるものづくりに邁進
2024年12月12日

タオル事業を手掛ける株式会社IKEUCHI ORGANICでは、最大限の安全と最小限の環境負荷を企業理念に掲げ、持続可能な未来を目指して日々努力を続けています。
世界一安全なタオルを届けたい―。その理念のもと、オーガニックコットンで織られたタオルは20年を超えなお、多くの人々に愛される商品に。今ほど環境意識が高くなかった頃から挑戦してきた理由、そして現在の取組みについて、代表の池内計司さんにお話を聞きました。
IKEUCHI ORGANIC株式会社(旧社名:池内タオル株式会社)
1953年に創業し、オーガニックコットン100%で作る今治タオルの製造会社。工場・直営店の消費電力を100%風力発電でまかなうなど、環境に配慮した取組みを行っている。
【事業内容】オーガニックテキスタイルの企画・製造・販売
【代表取締役】代表取締役社長 阿部 哲也 氏 代表 池内 計司 氏
【本社住所】愛媛県今治市延喜甲762番地
【電話番号】0898-31-2255
【FAX】050-3163-1018
【企業HP】https://www.ikeuchi.org/

『最大限の安全と最小限の環境負荷』をコンセプトにスタート
タオルはデザイナーズブランドのライセンスで作るのが基本的なパターンだった約25年前(1999年)、現在ほど意識がなかった環境問題に着目。環境に配慮した商品づくりを展開しはじめ、環境配慮の基準を満たす『エコマーク』の取得、タオル関連企業7社で組合による染色工場の設立など準備を重ね、「最大限の安全と最小限の環境負荷」をコンセプトに自社ブランド『IKT』を立ち上げ、オーガニックコットン100%のタオルの販売を始めました。
環境への負荷を抑えるため、2002年にグリーンパワー(再生可能エネルギーにより発電された電力)に切り替え、風力発電を利用。『風で織るタオル』という愛称で呼ばれるようになりました。

子どもの頃から目にしてきた“公害”の記憶がきっかけに
他ブランドとの差別化で見えてきたこと
ブランド立ち上げ以前は、いわゆる「今治タオル」というブランドもまだなく、海外の安価なタオルが市場に出ているような状況でした。国内外の他タオルブランドと差別化を図りたく、独自性を見出そうと奮闘。そんな時、子どものころから「公害」という言葉を耳にしていたことを思い起こしました。
今ようやく環境に対する意識が浸透してきていますが、私が子どもの頃からあった問題なんですよね。高度成長期に入り公害が叫ばれていたこともあり、僕らはまさに、環境問題が常にそばにあった世代と言えるでしょうね。

素材厳選と製品技術のブランド力で逆輸入
『IKT』を立ち上げた当初は、環境に重きを置いたコンセプトはまだまだ時代に合っていませんでした。ですが、弊社のタオルに興味のある方がいらしたら日本全国説明に出向き、国内にとどまらず海外にも挑戦。日本やアメリカの展示会に年3回出展するなど、多くの出費を必要としましたね。
そんな中、ニューヨーク・ホームテキスタイルショーへ出展し、世界32カ国、約1000社のうちの5社だけが選ばれる『ベスト・ニュープロダクト・アワード』を受賞しました。その後はまさに逆輸入、受賞を機に日本の大手百貨店などと取引が始まったり、テレビの報道番組で特集が組まれたりして、少しずつ知られるようになっていきました。
風力発電エネルギー100%に舵きり
世間でも次第に広がりつつあった環境問題への取組みとして、1999年に日本最大規模の環境関連の展示会「エコプロダクツ展(エコプロ)」がスタート。翌年の第2回目に弊社も参加しました。企業が環境負荷の低減に積極的に取り組むことを求められるものの、まだまだ大手ばかり。
弊社のような中小企業が環境問題に積極的に取り組んでいる例は少なかったのですが、環境への問題意識を持っている方々と接する中で、電力グリーン化のきっかけを得ることができました。


全国の風力発電所と、風力発電でつくられた電気を使いたいという企業や団体を結びつけるサービス『グリーン電力証明システム』を利用。中小企業としてはじめて、弊社が名を連ねました。
当時、この契約により、風力発電の電気代は従来の2割増に。それでも「世界一安全なタオルを届けたい」という理念のもと、社内でできる省エネに努めなければと考えました。“生産活動を行うこと自体が環境に負荷をかけている”ことを理解し、環境負荷の低減に取り組まなければ―。物品購入する際は今使っているものより省エネのものを購入する、といった社内規定に努め、自社の使用電力を100%風力でまかなえるように取り組んできました。
環境負荷低減を実行し、課題をクリアしていく日々
風で織るタオルから赤ちゃんが食べられるタオルへ
創業60年を迎えた2014年、「池内タオル株式会社」から「IKEUCHI ORGANIC株式会社」へと社名を変更しました。『池内タオル』『風で織るタオル』『IKT』のばらついた認識を統一すべく、社名もブランド名も「IKEUCHI ORGANIC」に。社名変更のタイミングで、すべての商品をオーガニック素材に変更し、安全・環境に配慮した製品を保証する国際的な認証システム「エコテックス®」のクラス1という安全基準をクリアしました。
次の60年は《2073年までに赤ちゃんが食べられるタオルを創る》と宣言し、本社工場は食品工場としてISO-22000を取得してHCCAPに準じたタオル製品を生産しています。

過度なパッケージを控え、環境に配慮したパッケージを提案
弊社のタオルは環境意識を持つファンが多く、お祝いの贈り物としても人気です。最近は梱包にもPP(ポリプロピレン)を使わず、タオルと同じ素材の風呂敷を使用しています。贈り物としてパッケージの用意は必要、でもパッケージ過多にならないよう、PPの袋も使わなくなりました。
ギフトラッピングには、環境に優しい素材のものを提供していて、オーガニックコットン100%の風呂敷もご用意しています。風呂敷は何回でも使えてエコですよね。

オーガニックと化学薬品との関係
製造過程において、染色工程は多くのエネルギーを使い、たくさんの排水が出ます。この排水をどこまでキレイにして地球に還すか。瀬戸内海には瀬戸内法(瀬戸内海環境保全特別措置法)』により許可制を敷くほか、条例により厳しい排水規制があり、その基準をクリアする義務があります。排水基準はCOD15PPM(100万分の15)以下。吉井タオルさんを中心とするタオル関連企業7社でYグループ協同組合を設立し、品質重視の染色工場「INTERWORKS」を新設しました。社内的には、12PPM(※水質基準の単位)で危険信号が出るように12PPM以下で排水。真水に近い状態で排水しています。
オーガニックと謳うにも関わらず、染料に関しては化学薬品を使用しています。天然染料では理想とする色の製品ができないためですが、化学薬品を使っていても安全であることを証明するため「エコテックス®」のクラス1を認証済です。化学染料は環境を守ることと相反しますが、製品として販売するためには色も大切です。
未だ実現に至っていませんが、オーガニックの植物で天然染料を作り、固着剤はサプリメントクラスの軽金属という染料を開発するなど試行錯誤しているところです。安全かつ環境負荷の最も少ない染色を目指し、安全性や品質に配慮していかねばと考えています。
これからの60年のために切り拓く
タオルに付けるネームタグはすでにオーガニックに、2021年からはミシン糸もオーガニック糸にするなど、純度をどんどん上げていっています。また、商品に付けているQRコード※を読み込めば、綿畑から出荷するまで 全工程が分かるようにし、安心も届けています。
先ほど申し上げた化学染料の課題一つをとっても、脱炭素という点では“オール天然”は必ずしも省エネとは限らず、生産から手元に届くまでの工程において環境負荷をゼロにはできません。
環境負荷を減らしていくためには、タオルを長持ちさせる洗濯やメンテナンス技術、サービスの向上、タオルを届ける輸送課題の解決などが挙げられます。赤ちゃんが食べられるタオル実現のため、これからも切り拓いていきたいですね。
※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。
