日本初のゼロエネルギーホテルを実現。次世代型ホテルで地域の未来を創る

太陽光パネルが設置されたITOMACHI HOTEL 0の屋根

ITOMACHI HOTEL 0は、日本初のゼロエネルギーホテル(『ZEB認証』)として、太陽光発電や省エネ設備を駆使して運営におけるエネルギー消費を実質ゼロに抑え、脱炭素化の実現に貢献しています。また、地域活性化においても重要な役割を果たし、持続可能な社会の創出を目指す新しいビジネスモデルとして注目されています。このプロジェクトの発起人である株式会社アドバンテックのサステナブル事業部 中道 憲太氏にお話を伺いました。

ITOMACHI HOTEL 0

再生可能エネルギー事業を展開する「株式会社アドバンテック」が企画し、2023年(令和5年)愛媛県西条市で開業。日本を代表する建築家の1人、隈研吾氏が設計したことでも注目を集めている。大幅な省エネと創エネにより電力消費を実質ゼロに抑え、国内のホテルで初めて『ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)』認証を取得。西条市の活性化を促しながら、環境と地域が共生する未来を目指すホテルとして、新たな価値を創出している。

ITOMACHI HOTEL 0
【本社住所】〒793-0027 愛媛県⻄条市朔日市250-7
【電話番号】0897-47-7568
【FAX番号】-
【HP】https://itomachihotel-0.com/

ホテルの外観

事業主
【会社名】株式会社アドバンテック
【事業内容】半導体関連事業、サステナブル事業
【代表取締役】水野 裕太郎・石本 祐子
【愛媛本社住所】〒793-0027 愛媛県西条市港293-1
【電話番号】0897-53-7711
【FAX番号】089-53-7733
【企業HP】https://www.advantec-japan.co.jp/

ホテル運営
【会社名】株式会社糸プロジェクト
【事業内容】いとまち内 施設運営
【代表取締役】石本 祐子
【本社住所】〒793-0027 愛媛県西条市朔日市284番2
【電話番号】0897-66-8620
【FAX番号】0897-66-8621
【企業HP】 https://ito-pj.co.jp/

サステナブルなまちづくりへの想い

弊社は、ITOMACHI HOTEL 0の事業主として、再生可能エネルギーを活用したマルシェや広場、ホテル、飲食店からなる『いとまち』のまちづくりに取り組んでいます。

弊社では、2012年にサステナブル事業部を立ち上げ、全国各地に再生可能エネルギー拠点を広げる活動を進めてきました。その過程で、日本の地方都市が直面する「人口の減少」「高齢化」「商業環境の変化」という深刻な課題を目の当たりにし、創業地である西条市も同じ課題を抱えていることに気がつきました。これを機に、弊社のサステナブル事業という強みを活かして地域活性化に貢献したいと考え、地元経済の再生と持続可能な社会の実現を目指して、ITOMACHI HOTEL 0の建設を決意しました。

画像:中道憲太氏
株式会社アドバンテック サステナブル事業部・中道憲太氏

省エネと創エネでゼロエネルギーを実現

ITOMACHI HOTEL 0では、『ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)』の実現を目指し、省エネと創エネの取組みを最大化しています。『ZEB』とは、省エネによってエネルギー使用量を減らし、創エネによって必要なエネルギーを生み出すことで、建物全体のエネルギー消費量を正味でゼロにすることを目指した建物のことです。

創エネの面では、設計者と協力し屋根の面積を広げる工夫を施すことで、太陽光パネルの設置数を最大化。873枚のパネルを導入し、最大297kWhの発電能力を持つ6つのパワーコンディショナー(交流電力変換機)を稼働させています。これにより、空調・換気・照明・給湯等、環境省が定める機器の消費エネルギーを100%自家発電で賄っています。さらに、『いとまち』内に蓄電池を設置し、昼間に発電した余剰電力を夜間にも活用しています。

画像:蓄電池
蓄電池

また、建物には高性能断熱材と断熱性能・遮熱性能が高いLOW-E複層ガラスを採用し、外気の影響を抑えながら冷暖房効率を向上。エネルギー消費を抑えながらも快適に過ごすことができる建物を実現しています。

加えて、高効率エアコンやLED照明を全館に導入。特にCOP(性能係数)の高いエアコンを採用することで、冷暖房の電力消費を大幅に削減しています。給湯システムには電気とガスを併用するハイブリッド方式を導入し、通常時は電気を使用しながら、需要が急増する時間帯にはガスを活用することでエネルギー効率を最適化。

このような取組みにより、日本国内のホテルとして初めて、『ZEB』認証を取得しました。

画像:客室
客室

最新の補助金情報を活用し、再生可能エネルギーを推進

弊社では、次年度のエネルギー関連予算計画や補助金・助成金情報を常に収集しています。
また、民間企業と地方自治体が連携して太陽光発電や再生可能エネルギー事業を推進する活動も行っています。今後も最新の情報を丁寧に収集し、お客様に最適な提案を行うとともに、自社サービスのさらなる向上を図っていきます。

『ZEB』を実現するための設計への挑戦

ITOMACHI HOTEL 0の設計における最大の課題は、限られた屋根面積に十分な太陽光パネルを設置し、『ZEB』認証を獲得することでした。そこで、発電効率を最大化するために屋根の形状や角度を綿密に計算し、太陽光パネルの最適配置を実現しました。
さらに、デザイン性と機能性を両立させるため、屋根の形状には石鎚山の山並みをイメージしたデザインを採用し、太陽光パネルとの調和を図りました。限られたスペースで最大限の発電効率を引き出すため、設計には多くの工夫と細かな計算が求められましたが、その結果、デザイン性を損なうことなく『ZEB』認証を獲得することができました。

ホテルの外観画像
石鎚山の山並みをイメージした屋根に設置された太陽光パネル

ゼロエネルギーホテルがもたらす地域活性化

ITOMACHI HOTEL 0の脱炭素化に向けた取組みは、環境への配慮にとどまらず、西条市の地域活性化にも大きな影響を与えていると考えています。ゼロエネルギーホテルとして注目を集め、メディアに取り上げられることで、西条市の認知度向上にも繋がり、地域住民や観光客が訪れる機会が増え、西条という土地への関心や愛着を深めるきっかけとなりました。

さらに、ITOMACHI HOTEL 0は西条市との連携を強化し、地元企業と協力しながら地域活動に積極的に参加しています。例えば、広場で地元の子どもたちが参加するサッカー大会を開催するなど、地域住民が集まる交流の場としても活用されています。こうした取組みを通じて、『いとまち』が単なる商業・宿泊施設ではなく、地域社会に根ざした拠点としての役割を果たせていることが嬉しいです。

また、ITOMACHI HOTEL 0は、他の地域や自治体からも注目を集め、ゼロエネルギーホテルを導入したいという声も増えてきています。この影響により、持続可能なホテル運営の新たなモデルとしてゼロエネルギーの取組みが広まり、今後さらに多くの地域に変化をもたらすことを期待しています。

画像:イベント等に活用できる広場
イベント等に活用できる広場

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証の維持

ITOMACHI HOTEL 0は、日本初のゼロエネルギーホテルとして、『ZEB』認証を今後も維持し続けることを目指しています。そのために、最新の技術を積極的に導入し、エネルギーの最適な管理と効率的な運用を継続していく必要があると考えています。再生可能エネルギーの活用を最大化することで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

また、環境負荷を最小限に抑えながら、快適な宿泊空間を提供し続けることも重要な使命のひとつです。省エネ設備の導入や建物の工夫を重ねることで、エネルギー効率を高めながら、宿泊者にとっても快適で心地よい空間を実現していきます。

持続可能な社会の実現に向け、これからも挑戦を続け、業界のモデルケースとなるホテルを目指していきます。

画像:ZEBプランナーロゴとBELS認証(建築物エネルギー性能表示制度)証明書
ZEBプランナーロゴとBELS認証(建築物エネルギー性能表示制度)証明書

今後、脱炭素事業を考えている方へメッセージ

脱炭素化への取組みは、多くのメリットがあります。太陽光発電や蓄電池を導入すれば、弊社が開発したエネルギーの使用状況を可視化できるエネルギーマネジメントシステム『AD EMS』により、エネルギーの最適化が自動で行われ、電気代などのエネルギー使用料金を削減できます。

導入時には初期投資が必要ですが、補助金等を活用することで負担を軽減できるため、経済的にも大きなメリットがあります。

また、ZEB化は新築だけでなく、既存の建物でも可能です。例えば、照明やエアコンを省エネ仕様のものに交換するだけでもエネルギー効率が向上し、建物の価値を高めることができます。「脱炭素化は難しそう」と感じる方も、小さな一歩から始めることで、大きな成果を得ることができます。今が脱炭素化を進められる絶好のタイミングです。この機会に、ぜひ積極的に取組みを検討してみてください。