レジリエンスZEB営業所で、脱炭素と地域防災の双方を叶える
2026年03月19日
四国電設工業株式会社は、2024年に建設した松山営業所においてZEBの最高ランク『ZEB』を取得し、省エネ率100%超を達成。脱炭素だけでなく地域の防災拠点として地域に開放する「省エネ・防災型施設」としての取組みの過程や今後について、代表取締役社長 上池 裕氏と松山営業所長 村中 弘之氏にお話を伺いました。
※ZEB…Net Zero Energy Buildingの略称。快適な室内環境を保ちながら年間のエネルギー消費量をゼロにすることを目標とした建物のこと
四国電設工業株式会社
1989年(平成元年)、国鉄時代から培った鉄道電気技術を活かし、四国旅客鉄道株式会社のグループ会社として設立。鉄道における電気設備の調査、設計、施工を一貫して手掛け、高い信頼性と品質を確保した安全で確実な施工のほか、建築電気設備工事、情報通信設備工事への進出や新技術の導入などにも積極的に取り組む。お客さまの信頼と、いかなるときも安全を基本に、質の高い技術を提供。地域に根ざした総合電気設備企業づくりを進めている。
【事業内容】 1.電気設備、電気通信設備、消防設備などの設計、施工 2.建物の電気設備などの保守及び管理 3.電気関係工事の調査・設計に関するコンサルティング 4.前各号に付帯する一切の業務
【代表取締役社長】 上池 裕 氏
【本社住所】〒760-0013 香川県高松市扇町一丁目1番48号
【松山営業所住所】〒799-2651 愛媛県松山市堀江町甲805番8
【電話番号】087-822-6218(本社)
【FAX番号】087-822-6226(本社)
【企業HP】https://www.jrsdk.co.jp/
移転計画のタイミングが、脱炭素を考える契機に
上池)弊社が脱炭素への取組みであるZEB導入を決めたきっかけは、元資本関係会社である日本電設工業株式会社との協業を通じて、省エネ建築の重要性を実感したことでした。
弊社はJR四国グループの一員として、鉄道の電気設備工事を担っています。グループ全体で脱炭素への取組みを推進する方針がある中、グループの電気関連会社である弊社が先駆けとなり、CO2削減や脱炭素化を実現していきたいと考えていました。
また、鉄道関係以外の分野においても、建築工事会社として先進的な設備設計・施工のノウハウを習得し、新たな提案力を身につけたいという思いと、これを将来的なビジネスチャンスにつなげたい、という狙いもありました。
Nearly ZEBではなく100%ZEBへの挑戦
上池)ちょうどそのような機会を伺っていたところ、松山営業所の移転計画が持ち上がりました。
老朽化や敷地条件といった課題を背景に検討が始まりましたが、次第に「どう建てるか」という点に意識が向いていきました。これからの社会では、建物は省エネであるだけでなく、自らエネルギーを創り、使う時代になるということを、現場での経験からも強く感じていたからです。
そして、挑戦するのであれば、削減基準75%以上100%未満の『Nearly ZEB』ではなく、100%以上の『ZEB』を目指そうと決めました。
初期投資の増加は想定されましたが、補助金の活用や余剰電力の売電などにより、コスト削減にも工夫を重ねました。
また、松山市が環境モデル都市であり、脱炭素に熱心な地域であることを知ったことも挑戦の後押しとなりました。補助金制度を活用しながら、防災・省エネ・地域貢献を両立した建物を目指すことができました。
考えられる脱炭素施策を、可能な限り実現
上池)完成した松山営業所は、延床面積約690m2、3階建ての建物です。
一次エネルギー削減率は105%でZEBの中でも最高位にあたる『ZEB(省エネ率100%超)』の認証を取得し、さらに『BELS』5つ星評価を獲得しました。
建て替えにあたっては、補助金制度(環境省・レジリエンスZEB事業)を活用し、導入コストの約3分の2を補助で賄うこと、また余剰売電の活用でコストを削減し、経営面での合理性も確保することができました。
※『BELS』5つ星…建築物の省エネルギー性能評価制度における最高ランクの評価で、国の省エネ目標達成に貢献する高いレベルの省エネ性能を第三者機関が客観的に認定した証。
設置制約を乗り越えた太陽光パネル計画
村中)屋上および車庫屋根には、合計68枚の太陽光パネルを設置しました。発電容量は37.4kWに達します。
太陽光パネルの設置場所には制限があり、当初は目標の達成が難しいのではないかという懸念もありましたが、車庫を新設し、その屋上を活用することなどで解決しました。他にも設置可能な場所を検討しましたが、デザイン面とのバランスを考慮し現在の形になりました。
加えて、10kWhの蓄電池やヒートポンプ給湯器を導入し、発電した電力を効率的に活用できる設計としました。高効率空調設備には人感センサーを組み合わせ、不要な稼働を抑制しています。
建築設備についても、ガラスは全て断熱、遮熱性能の高いものを採用し、壁面や天井には断熱材を施工しました。空調・換気には全熱交換器を導入し、外気を取り入れながらも熱損失を最小限に抑えています。照明は照明制御装置を採用し、設計段階で明るさを約80%に設定しつつ、外光に応じて自動調光する仕組みとしました。
これらの設備により、夜間や天候不順時には発電量が不足する場合もありますが、日中の電力はほとんど太陽光で賄えるようになりました。余剰電力は売電し、電気料金の削減にもつながっています。
今後の設備拡充とさらなる可能性
村中)今後は蓄電池容量の拡充についても検討を進めていきたいと思っています。
今回の松山営業所の事例をきっかけに、親会社であるJR四国からZEB実証事業の実績について問い合わせを受け、JR四国ホームページ(環境の取組み)へ弊社事例を掲載していただきました。
今後はこの実績を活かし、新たなビジネス展開を広げていけたらと考えています。
社員の意識の高まりが、事業の大きな財産に
上池)弊社の経営理念に「クリーンで人に優しい快適な環境づくりに努めます」という言葉があります。その理念の通り、常に環境問題に配慮した会社でありたいと考えてきました。
これまでも、HV・EV車への更新、業務のデジタル化やペーパーレス化、ダンボールのリサイクル、移動にはエネルギー消費が少ない公共交通機関を利用するなど、地道な脱炭素アクションに取り組んできました。
今回のように、高度な省エネ性能を追求した建物の建築は初めての試みであり、社員からは「照明を80%に抑えると暗いのではないか」「使い勝手はどうなのか」といった不安の声もありました。
しかし実際の運用では大きな不満はなく、空調や照明の自動制御も自然に受け入れられています。むしろ、エネルギー使用状況が可視化されたことで、社員一人ひとりの省エネ意識が高まったように感じています。電気使用料金においても、ランニングコスト削減の効果がみられました。
ZEB導入の過程で得た知見は、本業である電気設備工事における提案力の強化にもつながっており、今後の事業展開にとって大きな財産となっていると感じています。
省エネの先に、防災の拠点として社会貢献を
上池)松山営業所が目指したのは、省エネ性能の向上だけではありません。本施設は、災害時の活動拠点となる業務用施設を中心に、エネルギー自立化が可能で、換気機能等の感染症対策も兼ね備えた『レジリエンス(防災・減災)ZEB』としての役割も重視しました。災害時に地域へ貢献できることを、大きな目的の一つとしています。
松山営業所が位置する堀江地区は、津波リスクを抱える地域です。周囲に高い建物が少ないこともあり、今回の3階建ての建物は、地域の方々にとって安心できる避難場所の一つとなり得ると感じました。南海トラフ地震のリスクを踏まえても、災害時に重要な役割を果たせる存在になれたらと考えています。
避難スペースと非常時を支える設備
村中)災害時には屋内外で避難場所を提供できるよう、3階には約100㎡の避難スペースを確保しました。松山市の基準に基づき、約100人規模の避難が可能です。
また、蓄電池を備えることで、停電時でも非常用電源として照明や電源を供給できるほか、非常食や簡易トイレ、毛布などの備蓄品も整えています。
こうした体制が評価され、松山市と防災協定を締結することとなりました。その後も、地域の自主防災組織との連携を続けています。災害が起こらず、避難しないで済むことが一番ですが、いざという時に地域の方々が安心してもらえる場所でありたい。その思いを建物の随所に反映しています。
上池)現時点では、他拠点での具体的な建て替え計画は未定ですが、機会があれば同様の省エネ・防災型施設の整備を検討したいと考えています。
この松山営業所の取組みは、JR四国グループ全体にも共有され、グループ内外から注目を集めています。
脱炭素事業を考えている方へのメッセージ
上池)脱炭素事業への取組みは、環境配慮だけを目的とすると、なかなか前に進めにくいものだと感じています。
脱炭素やSDGsは大切ですが、企業にとってのメリットも含めて考えなければ、持続的には進みません。
省エネによるコスト削減、防災拠点としての社会的価値、技術力向上、そのすべてを総合的に判断し、無理のない取組みを進めていきましょう。